成年後見制度

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成年後見制度には法定後見制度と任意後見契約の2種類があります。どちらを使うかのポイントは、対象となる本人すなわち後見される人の判断能力がどれくらいあるかにあります。本人の判断能力が現に低下している状況であれば、法定後見制度を利用することになります。一定程度の判断能力が保たれている場合には、任意後見契約を締結することができます。

それぞれの後見制度がどのようなものであるか、その概略をみてみましょう。

法定後見制度

法定後見制度は、精神上の障害により、対象となる本人の事理を弁識する能力が低下している場合に利用する制度です。

制度を利用する場合には、家庭裁判所に申し立てを行います。申し立てを行うことができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長とされています。

申し立てにあたっては、申立書や医師の診断書などが必要となります。

申し立てが受理されると、必要に応じて家庭裁判所の裁判官により後見開始の審問、保佐開始の審判、補助開始の審判が行われます。

法定後見の類型

法定後見には「後見」、「保佐」、「補助」の3つの類型があります。

法定後見の類型
  • 後見 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある
    • 自己の財産を管理・処分することができないくらいに判断力が欠けている
  • 保佐 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な
    • 日常的に必要な買い物などはできるが、不動産などの重要な財産を管理・処分するには援助が必要な程度に判断力が不十分
  • 補助 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な
    • 重要な財産を管理・処分するには、本人の利益を保護するために誰かに代わって管理・処分してもらった方が良い程度に判断力が不十分

最も深刻な状態が「後見」、それより軽い状態が「保佐」、さらに軽い状態が「補助」となります。精神上の障害である認知症等が進むにつれて、「補助」から「保佐」そして「後見」へと保護の必要性が増していきます。

身上配慮義務

「身上配慮義務」とは、民法858条で成年後見人に求められている義務のことです。

民法858条

第八百五十八条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

成年後見人は、成年被後見人(本人、後見される人)の身上配慮義務として、身上保護と財産管理の2つを行うことになります。

身上保護と財産管理
  • 身上保護 本人の生活や療養看護に関する事務
  • 財産管理 本人の財産に関する事務

任意後見制度

対象となる本人の判断能力が一定程度保たれている場合には、任意後見契約を利用することができます。任意後見は任意後見契約を締結することで本人の利益を守ります。現在は判断能力が保たれているが、将来の判断力低下に備えて、事前に後見事務の内容や後見人を定めておくのが任意後見契約です。

任意後見契約の利用方法

任意後見契約には、3つの利用方法があります。

任意後見契約の利用方法
  • 将来型 将来に備えて、あらかじめ任意後見契約だけを締結しておく方法
  • 即効型 任意後見契約締結後、即座に任意後見監督人を選出し、任意後見を開始する方法
  • 移行型 当初は財産管理や特定の事務に関する委任契約を締結し、将来判断能力が低下した場合には、任意後見に移行する方法

任意後見契約は、契約であるため本人の判断能力が必要となります。その意味で、将来に備えての契約であるといえます。判断能力があるうちに契約を締結しておき、判断能力が不十分となったときに、本人が希望した任意後見人に代理権を与えることで後見事務を行ってもらう制度です。

上記の「将来型」「即効型」「移行型」のうち、「移行型」が最も多く用いられます。

生前事務の委任契約

そのためには任意後見契約締結後、本人の状況がどのような状況にあるかをその都度、把握しておく必要があるといえます。そこで任意後見契約とともに、本人の状況を確認するために、あわせて生前の事務委任契約を結んでおくことが必要となる場合が多くあります。

死後事務委任契約

また任意後見契約では、本人の死によって契約が終了してしまうため、本人の死後のことについて事務委任契約を結んでおくことも多く見られます。

したがって任意後見契約では、判断能力があるうちは生前の事務委任契約、判断能力が不十分になってからは任意後見契約、そして本人の死後は死後事務委任契約、と3つの契約で展開されていくことが多いといえます。

任意後見契約の特徴

任意後見契約については「任意後見契約に関する法律」という法律に定められています。本人の利益を守ることができるように、以下のような特徴があります。

任意後見契約の特徴
  • 公証人が作成する公正証書によって契約する
  • 家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから契約の効果が生じる
  • 任意後見契約した旨の登記が必要であること

任意後見契約では、任意後見人を自分で選ぶことができます。それに対して法定後見制度では後見人は家庭裁判所が選びます。申し立ての際に、後見人候補者をあげるようにはなっていますが、必ずしもその後見人が選出されるわけではありません。家庭裁判所が専門家や親族、後見人候補者などの中から妥当な者を選任します。

本人の判断能力が保たれており、後見人になってほしい人がいる場合には、任意後見契約を結ぶことでなってほしい後見人に就任してもらうことができます。家族にとっては、後見人になってほしい人に後見人になってもらえるという点で安心できるといえます。

ご相談ください

法定後見制度と任意後見契約は、いずれも本人が認知症などを発症した際に、本人と財産を守ってくれるものです。どちらにもメリットがあり、デメリットもあります。それぞれがおかれている状況により最も適切な方法を選ぶことが大切になります。

当事務所では老後に関する悩み事のご相談をおうかがいしております。ぜひお気軽に当事務所に、ご相談ください。ご本人様、ご家族様のこれからの生活が豊かなものとなりますようご一緒に考えさせていただきます。