相続手続き

遺言書作成・相続手続き

「家族が亡くなったけど、どのように相続の手続きを進めていくのかわからない」「遺言がないから何をどうすればいいのか全く分からない」「銀行で遺産相続の説明をきいたけど、自分たちだけで手続きを進めていくことは不安だ」「亡くなった人の銀行口座が凍結されるって聞くけど、どういうことだろう」など、これまで相続に携わったことがない方にとっては、どのような手続きが必要になるのか全くイメージがわかないのではないでしょうか。

ここでは、どのように手続きを進めていけばよいのかをみていきましょう。

遺産整理の概略

遺産を相続する場合、次のようなおおむね、次のような手順で手続きを進めていきます。

遺産相続の手順
  1. 相続人の調査と相続関係説明図の作成
  2. 財産調査と財産目録の作成
  3. 遺産分割協議書の作成
  4. 預金の解約、株式の移管、不動産の名義変更

相続人の調査と相続関係説明図の作成

相続人の確定

相続にあたっては、誰が相続するのかを確定することが、最も重要になります。相続人を確定するには、必要な戸籍を収集することが必要です。

相続人の確定
  • 被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を確認する書類
    • 戸籍の附表または住民票の除票
  • 被相続人の死亡から出生までのすべての戸籍
    • 除籍となった戸籍からさかのぼり被相続人が誕生して親族に入ったときの戸籍までをすべて収集します。
  • 相続人の生存と住所を確認できる書類
    • 相続人が生存していることを確認できる書類として現在の戸籍
    • 相続人の住所地を確認するための戸籍の附表または住民票
    • 兄弟姉妹が相続人になる場合には、被相続人の両親の死亡から出生までの戸籍が必要となります。被相続人の兄弟姉妹を特定しなければならないためです。

相続関係説明図の作成

相続関係説明図というと難しく聞こえますが、イメージとしては被相続人についての家系図のようなものを思い浮かべてください。収集した戸籍をもとにして作成します。

相続関係説明図には、被相続人の①最後の住所、②最後の本籍、③被相続人、④相続人が示されています。法務局のサイトに「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」が示されていますので参考にしてください。

法務局のサイトに例示されている法定相続情報の例

法定相続情報一覧図の活用

管轄法務局に相続関係一覧図と必要となる戸籍一式を提出すると、登記官が法定相続人を確認した上で、「法定相続情報一覧図」として証明を得ることができます。

法定相続情報一覧図は、相続人を確認するための戸籍関係書類一式の代わりとなる証明書です。金融機関で預金解約手続きを行う場合や不動産の相続手続きを行う場合など相続関係手続きにおいて必要となる情報は、この法定相続情報一覧図に集約されています。したがって、この証明書があれば戸籍関係書類一式を提出する必要がなくなります。

「法定相続情報一覧図」は、相続人が管轄法務局に申請することで作成できます。

この証明書は、相続に関する次のような場面で使用できます。

法定相続一覧図の活用場面
  • 不動産の相続登記
  • 金融機関での相続手続き
  • 保険の手続き
  • 自動車関係の手続き
  • 未支給年金の請求

財産調査と財産目録の作成

財産調査は、大きく①不動産、②預金・貯金、③株式、④保険に分けることができます。ここでは種類ごとにどのようなことをしていけばよいのかをまとめてみます。

不動産の調査

まず被相続人が所有していた不動産をリストアップすることから始めます。不動産が所在する市役所、町村役場で名寄帳を取得します。名寄帳には被相続人が所有していた不動産がすべて掲載されています。次に、被相続人が所有していたすべての物件の固定資産評価証明書を取得します。基本的には名寄帳に掲載されている不動産と評価証明書の不動産は同じものになるはずです。

被相続人が所有していたすべての不動産がリストアップできましたら、物件ごとに内容を確認していきます。それぞれの不動産の登記事項証明書を取得します。場合によっては、公図や地番図も取得します。

不動産登記事項証明書の例

預金・貯金の調査

被相続人の死亡日現在の預金残高証明書を取得します。

その際に、あわせて取引明細を取得しておくと、生命保険の引き落としや生前贈与などを知らなかったことがわかることもあります。

預金口座は普通預金のほかに定期預金がありますので1つとは限りません。他の金融機関に別の口座がある場合もありますので、注意が必要です。投資信託などの口座開設の有無についても確認しておく必要があります。最近ではインターネットバンキングの場合や通帳を作成していない場合などもありますので、かなり注意深く調査を進めることが必要です。

株式の調査

株式については、銘柄とおおよその金額を把握することが必要ですが、被相続人から聞かされていたり、生前に話題になっていないと所持していたかどうかが不明の場合も多いと思います。

その場合、証券会社から定期的に送付されてくる「取引残高証明書」「配当金通知書」などの郵便物から知ることができます。

また「証券保管振興機構」のサイトから「登録済加入者情報の開示請求」を行うことができます。開示請求を行うことによって、株主である被相続人が株式に係る口座を開設している証券会社、信託銀行の名称及び登録内容を知ることができます。

保険の調査

生命保険の保険金は原則として相続財産には含まれません。しかし財産目録に記載するケースが多いようです。

基本的には保険証券を確認して、受取人が加入先の保険会社に保険金の請求をすることになります。

どこの保険会社に加入していたかが不明の場合は、一般社団法人生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用することで、保険会社までは知ることができます。保険会社が判明すれば、該当の保険会社に照会することになります。

財産目録の作成

①不動産、②預金・貯金、③株式、④保険などが調査できたら、次は財産目録を作成します。不動産の価額については、明確なきまりはありませんが、一般的に固定資産税評価額を記載することが多いようです。固定資産税評価額は実売価格と異なります。したがって実際の価格とずれが生じてしまいます。実売価格を知るためには査定が必要となりますが、そこまでは行わないことが一般的です。

財産目録には、特別の様式はありません。どのような財産がどのくらいあるかを一覧にしてあればたります。相続人はこの一覧をもとに、遺産分割協議を進めていくことになります。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書とは

相続人が特定し、相続財産が特定できた段階で、財産目録をもとにして遺産分割協議を進めていくことになります。相続人の間で遺産をどのように分割するかを話し合っていきます。「誰が、どの遺産を、どの程度取得するのか」を示したものが、遺産分割協議書です。分割の割合は、必ずしも法定分割の割合にしたがう必要はありません。

遺産分割協議書も、財産目録と同様に、決まった形式はありません。次のような内容が記載されていれば要件を満たします。

遺産分割協議書の内容
相続人についての記載
  • 被相続人の氏名、本籍、最後の住所、生年月日、死亡年月日
財産についての記載
  • 不動産
    • 土地:所在、地番、地目、地積
    • 建物:所在、家屋番号、種類、構造、床面積
  • 預金・貯金
    • 金融機関名、支店名、預金種類、口座番号、残高
  • 株式
    • 株式を分け合う際のそれぞれの株式数

遺産分割協議証明書を用いることも可能

遺産分割協議書が完成したら、相続人全員が遺産分割協議書に押印します。

とはいえ必ずしも相続人全員が一堂に会することが可能な場合ばかりとは限りません。相続人の数が多い場合、相続人の中に海外や遠方に住んでいる方がいる場合などが、そうした場合にあたります。その場合は、遺産分割協議書と同じ書類を相続人の人数分作成し、それぞれの書類に署名・押印していく方法をとります。「遺産分割協議証明書」と呼ばれます。

遺産分割協議がまとまらない

遺産分割協議がスムーズにまとまらない場合も考えられます。遺産分割協議は全員が同意することが必要だからです。雑誌などで「争続」などと揶揄されているケースです。相続人同士でうまく話し合いを進めることができずに、相続人同士で対立し争いになってしまっている場合です。

こうした場合の解決方法は、残念ながら裁判所にお願いすることになります。遺産分割調停では、家庭裁判所の裁判官と調停委員が相続人全員から話を聞き、第三者の立場で助言してもらえます。この段階では判断を下すのは相続人当事者です。家庭裁判所裁判官や調停委員はそのための助言を行います。

遺産分割調停でもまだ話し合いがうまくまとまらない場合は、審判手続きに入ります。裁判所による審判が行われるわけです。審判に要する時間や弁護士の先生を依頼する費用もかかってきます。相続人間の人間関係も相当な程度に溝を深めることになってしまいます。

できればそうならずに遺産分割協議を進めたいものです。そのためには事前に遺言書を作成しておくことが最良の解決策だと考えています。詳しくは遺言書作成をご覧ください。

ご相談ください

これまで相続手続きについてみてきました。「相続手続きは広範囲にわたるので、とても面倒そうだな」「自分だけではできそうもないので、専門家のアドバイスが欲しい」「仕事もあるし、相続手続きばかりに時間をとられてはいられない」などと感じた方も多いのではないでしょうか。

そんなときは当事務所にご相談ください。よりよい相続を実現するための相続のあり方を一緒に考えていきましょう。